2014年08月16日

熱射病と応急処置 “cold water immersion” について


熱射病と応急処置 “cold water immersion” について
by Yuri Hosokawa

熱中症の中でも最も重篤な状態に値する熱射病は、(1)深部体温40℃以上、(2)中枢神経系の機能障害(意識消失・ 性格や言動の変化・不自然な行動)を伴う病態であり、命の危険が伴う緊急事態であることを認識しなければなりません。熱射病の応急処置の最も重要な点は深部体温を一刻も早く(熱射病になってから30分以内に)38℃台に下げることです。熱疲労とは異なり、熱射病の状態になると体は体温調節機能を失ってしまい、自力で平温に戻ることはできません。そのため、外部から積極的に冷却することが必要不可欠となります。

熱射病患者の応急処置の最大のルールは「まずは冷却、その後に搬送」(”cool first, transport second”)です。熱射病を疑った場合は直ちに冷却を開始し、それと同時(あるいは次に)搬送手段を確保することが重要であり、搬送を優先して冷却を遅らせることは患者の生存率を著しく下げることに繋がってしまいます。逆に、直ちに冷却が行なわれ、深部体温が40℃以上の時間を抑えることができれば生存率は100%という報告もあり、熱射病のリスクが特に高まる夏季には熱射病のリスクに応じた事前の対応(熱射病に関する正しい知識を身につける、正しい応急処置をするための物資を準備するなど)をとることが求められます。

最も効果的だとされている冷却方法は氷水に患者の体を浸す”cold water immersion” (CWI)であり、熱射病患者の応急処置の治療基準とされています。CWIには、(1)水源、(2)水温を20℃以下に保つための氷、(3)患者の体を浸すことのできるサイズの子供用プールあるいは大きなタブの3つを用意する必要があります。また体全体を氷水で覆うことは冷却効率を高めることに繋がるため、できるだけ患者のサイズにあったタブを用意することも重要になります。迅速な対応をするためには、熱射病リスクの高い猛暑日には事前にCWI用の容器に水をためておくことを推奨されており、仮に大人を子供用プールで冷却する場合は、四肢ではなく体幹を優先的に冷やすように工夫することもできます。

CWIで冷却する際は患者が溺れてしまわないように体の向きを固定し、首より上は水に浸からないように配慮します。冷却中は常に患者に話し続けるようにし、患者を安心させるとともに意識レベルを継続的に監視することも重要です。また、水温は体表に触れている部分から上昇してしまうため、タブの中の水をかき混ぜることで常に冷たい水が体の周りを対流しているようにすること、そして水温を保持するために氷の補充をすることも重要です。

タブが無い場合や製氷機が無い場合は、できるだけ大量の冷水を患者にかけ続け、体温の上昇を抑えます。熱射病(深部体温が40℃以上)の場合、氷嚢を動脈に当てる、日陰で休むなどの処置では冷却が間に合わず、高熱からの多臓器不全によって死に至るリスクが高まるため、 確実な冷却手段の確保を事前にしておきましょう。

CWI Overhead.JPG
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